遊廓語のしをり(いろは順)
- 流連(いつづけ)
- 同一妓楼に一日以上泊って居る事。
- 一現
- 関西方面に在る一流以下の貸席(揚屋)で、ふりの客でも揚げる家。一現茶屋とも云ふ。
- 一現の客
- 照介者も無いふりの客。
- 遊廓
- ある定められた一廓に、貨座敷、娼妓、芸妓、待合、料理店等の集合して居る遊里
- 一本に成る
- 小芸妓から大芸妓に成る事。
- 居稼ぎ
- 芸娼妓が、抱へ主の家で客を取つて稼ぐ事。
- 一枚鑑札
- 芸者なら芸妓のみ、娼妓なら娼妓のみの鑑札を一枚しか持つて居ない事。
- 花代
- 玉代、線香代と同一意味で、芸娼妓の揚代の事である。
- 半玉
- 小芸妓の事で、東京では御酌とも半玉とも云ふ。関西では舞妓と云つて居る。処に依つては二つ一とも云ふ。
- 箱
- 三味線の事であるが、世間では芸妓の事を箱と云つて居る。
- 初店
- 娼妓が初めて店へ出て客を取る事。
- 伯人
- 島原で云ふ花魁の一種で、大夫の次位に位するもの。
- 張店(はりみせ)
- 娼妓は表店(おもてみせ)に並んで店を張つて居る事
- 二枚鑑札
- 一人の女で芸妓の鑑札と、娼妓の鑑札とを同時に二枚持つて居る事。
- 二階廻り
- 二階で働く人。
- 本部屋
- 花魁の部屋の事で、居稼ぎ制の家に限つて在るもので、廻じ部屋のある家に限つて、本部屋と廻し部屋とに分けて置く。只単に部屋とも云ふ事がある。箪笥、鏡台茶箪笥、長火鉢等が置いて在つて、如何にもなまめかしい女の部屋らしい感じが漂つて居る。
- 幇間
- たいこもち、詰り男芸妓の事。
- 本茶屋
- 重に関西方面で云ふ事で、無い客は揚げ無い家、所謂一二流の揚屋又はは貸席、御茶屋等の事を云つて居る。芸妓・及娼妓を呼んで客を遊ばせる処。
- 通し花制
- 客の廻しを取らずに、一人の客に一人の娼妓が附きつきりで居る事。
- 止め制
- 留め花とも云ふ。又は泊め花と書く所もある。要するに通し花と略同様で、他の客へやらない為めの足止め料と思へばよい。
- 通し物
- 客席に出す酒、肴、茶菓の類、台の物とも云ふ。
- 東京式
- 一口に東京式と云ふのは、普通廻し花制の事を云つて居る。
- 時
- 昔客と花魁とに「時」した当時の遺習で、今はあのちやきヽと云ふ拍子木は、まんぺん無く客の廻しを取るやう、又他に間違等の起らぬやう等の警告用になつて居る。
- 年増
- 二十歳以上四十歳以下の稍年とつた女
- 遠出
- 客と共に遊廓外に出て歩く事。
- 茶屋
- 大阪方面では揚屋又は貸席の事を云ひ,東京方面では重に引手茶屋の事を云つて居る。
- チップ
- 祝儀又は心付け。
- 料理屋
- 東京の料理屋は大抵芸妓が這入るけれども、大阪の料理屋へは芸妓は殆んど這入らない。
- 御座敷
- 客席の事。
- 御職
- 其の家の首席花魁を云ふ。標準は、玉数から行く家もあれば、客の消費高を標準とする家もあつて一定してない。
- おふれまひ
- 宴会の事。
- 御定り
- 標準、又は並と云ふ意味で、何処の遊廓でも此の御定りが一番勉強してある。
- 花魁
- 娼妓を総称した代名詞。
- 大引け
- 午前二時以後。
- お引け
- 各寝室へ引取る事。
- 大阪式
- 通例客の廻しを取らぬ事を云つて居る。上方式と云ふ処もある。
- 送り込み制
- 関西方面に多く、置屋は置屋、揚屋は揚屋と、各専門的に営業をして居る処で、娼妓は置屋から揚屋へ送り込まれて行くので此の称がある。
- 御酌
- 関西方面では半玉(小芸妓)の事を云ふ。
- 御茶を引く
- 客が一人も無い日の事を云ふ。
- おちよぼ
- 関西方面の言葉で、見習の少婢。
- お盃
- 東京で云ふ「御挨拶」の事。
- 御約束
- 御座敷の先約をしてある意。
- 御貰ひ
- 客席へ出て居る際中に、中座して他の客席へ呼ばれて行く事。
- おひろめ
- 芸妓が其土地へ初めて出た時に、待合とか茶屋とかに挨拶をして歩く事。
- 置屋
- 芸妓又は娼妓を抱へて置く家。
- 御直し
- 時間が切れて次の時間をも約東する事。
- 割床
- 一つの室に二組以上の客を寝かす事。
- 割り部屋
- 廻し割屋の事。
- 貸席
- 関西方面の言葉で、御茶屋又は揚屋を云ふ。芸娼妓を揚げて遊ぶ家で、料理は仕出屋から取つて居る。本茶屋、一現茶屋、おやま屋等の別がある。
- 貸座敷
- 芸娼妓の置屋、揚屋、又は兼営の家等を総称したもの。
- 上を張る
- 御職から二三番目迄の花魁の事を云ふ。
- かげま
- 徳川時代に存在して居た男娼の事。
- かむろ
- 花魁の少婢。
- 陰店
- 表に店を張つて居ずに、くゞりを這入つて、表がら見えない処に店を張つて居る事。
- 貨しの式
- 仮視の式とも書く、島原で行る事で、太夫を置屋から揚屋へ貨す意味も含んで居るが、客への御目見えが主眼である。太夫が代るヽ挨拶をして、杯をほす真似をして引下るのだ。
- 空玉
- 相方以外の娼妓に玉をつける事。
- 外芸妓
- 他家で抱へて置く芸妓の事。
- 総花
- 相方以外の花魁全部に出す祝儀。
- よそ行き
- 関西の言葉で遠出に同じ。
- 大鼓持ち
- 幇間とも云ひ男芸妓の事。
- 台の物
- 通し物とも云ひ、只単に台とも云ふ客席に出す、酒、肴。茶菓等の事である。
- 太夫
- 花魁の最上位に位するもの。
- たま
- 芸妓及び娼妓を一つの玉に仮へて云つた言葉である。
- たて引
- 芸娼妓が其の客の勘定を立替へる事
- なかどん
- 仲居の事。やり手又は小母さんとも云ふ。
- 内所
- 抱え主。
- 仲
- 北廓とも云ふ。吉原の異名。
- 馴染客
- 同一娼妓に三度以上通つた客。
- 馴染花
- 初回の客でも、馴染花を附くれば、馴染と同一待遇を受ける事。
- むらさき
- 醤油の事を云ふ。
- 裏をかへす
- 同一娼妓ヘ二度目に通ふ事。
- 馬
- 勘定が足りなくて、銭算段に出て行く人に楼主側から着いて来る人。
- うつりかへ
- 季節の変り目に衣替へをする祝
- 内芸妓
- 自家で抱へて置く芸妓。
- 裲襠
- 昔女官か殿上人の上着であつたが、今では殆んど娼妓の専用物の様な形ちに成つつて居る。本書の表紙絵の上着は其れである。
- やりて
- 仲居の事、小母さんとも云ふ。
- 屋方
- 館とも書き、関西の置屋の事、
- 廻し制
- 廻し花制とも云ふ。一人の娼妓が同時に二人以上の客を取つて、順次に客から客へ廻つて歩く事。
- 舞子
- 小芸妓の事で東京では半玉と云つて居る、二つ一、八分、御酌等と、処に依つて名称が異る。
- 待合
- 客が芸妓を呼んで遊ぶ処。料理は仕出し屋から取る。
- 曲代
- 玉代、花代、揚代等と同意義。
- まんた
- 甲種娼妓の事で、送り込み制を云ふ。
- 源氏名
- 本名に非ず、娼妓の妓名。
- 公娼
- 娼妓とも花魁とも云ふ。娼妓の鑑札を持つて居る女。
- 子供しゆ
- 芸妓又は娼妓の事を斯く呼ぶ事がある。
- 御挨拶
- 御座敷中の妓に、他から口が掛つて来た場合、一寸其の御座敷へ御挨拶に行く事。関西では御盃と云ふ。
- 小方屋
- 第二種貸座敷の事で、芸妓妓置屋の事。
- えて
- 猿の事。迷信の深い社会だから斯う呼ぶのだ。
- 揚屋
- 置屋から芸妓又は娼妓を呼んで遊ぶ処。料理は仕出し屋から取る。
- あたり目
- するめの事(ほしいか)
- 逢ひ状
- 置屋から揚屋へ芸、娼妓を呼ふ時の呼び出し状。
- 上り花
- 御茶の事。
- 明し花
- 芸、娼妓を客室に一夜を明さす時に附ける代金。
- 扱席
- 東京で云ふ検番の事で、取転事務所と云つた様な所。
- 三枚通し
- 三人の娼妓の中から一人の相方を撰び、他の二人は接待の女中役を演ずる仕組。
- 妓夫
- ぎふたとも云ふ。貸座敷の客引。
- 玉代
- 揚代、花代、線香代等に同じ。
- 湯女
- 湯治客に春を売つて居る私娼。
- みづてん
- 三流の安芸妓の事で、相手を撰ばずに転ぶの意。
- 耳入
- 芸、娼妓が御座敷中に、他の客からお貰ひの口が掛つて来る事。
- 時間制
- 時間花制とも云ふ。一時間いくらで客を遊ばせる仕組みで、此の場合には廻しを取らぬ事が多い様だ。
- 新造
- 花魁の少婢。又は見習、或は下働き。
- 初回の客
- 最初に来た客。
- 私娼
- 密淫売の事で、だるま、草餅、ごけ等と云ふ所もある。
- 宿場
- 遊廓の様に集娼制に成つて居ずに、町の処々に女郎屋がある事。
- しやごま
- 娼妓特有の結髪で、本書の表紙絵の如き頭。
- 下湯
- 芸、娼妓が局部を消毒する事。
- 島
- 大阪では遊廓の事を島と云つて居る。
- 仕切花
- 何時から何時迄の玉代が何程、と云ふ具合に時間で仕切して遊ばせる制度。
- 七三
- 四六、分け、丸抱へ等と云ふのは、総て玉代を、抱へ主との分配方法を其の僂云つたものである。
- 知らせる
- 御座敷の口をかける事。
- 引け
- 十二時過ぎの事。
- 引きつけ
- 応接間。
- 左り褄
- 芸妓の事を云ふ。
- 引手茶屋
- 貸座敷へ客を案内する所で、客が芸妓を揚げて騷ぐ所だ。但し茲へ娼妓は呼べない。そして茶屋から行つた客が賃座敷で消費した金は全部茶屋が引受ける。
- 紋日
- 遊廓の祝日の事で、芸、娼妓が紋付きを着て客席へ出た事に初まる。盆、正月、移りかへ、鳥の日、馬の日等、土地と処とに依つて相異する。
- 住みかへ
- 他の抱主の許に住みかへする事。