調布町宿場

調布町宿場は東京府北多摩郡調布町字上布田町に在つて、新宿追分から京王線に乗り、調布停留場と、布田停留場との中間に在る。中央線境駅から南へ約一里十町の地点に当つて居る。追分から布田迄片道廿四銭。

昔は調布を五宿と云つた。飛田給、上石原、下石原、小島分、布田、国領の五宿があつたからだ。調布町と成つたのは、明治卅年に此の五宿が合併してから以後の事である。今の女郎は其の当時からの遺物である事は云ふ迄もない。目下貨座敷は三軒あつて、娼妓は二十一人居る。栃木茨城、及東京附近の女が多い。のんびりと落附いた田舎の宿場気分を味はい度い人は行くが善い。郊外の悠暢な町である事は請合だ。店は陰店を張つて居て娼妓は全部居稼ぎ制、遊興は廻し制で、通し花は取らない。費用は本部屋が五円五十銭で台が附き、一等は五円、二等は二円五十銭で台は付かない。妓楼は桝花楼、明保楼、当麻楼の三軒である。

附近には多摩川、布田天神宮、近頃売出しの京王閣等がある。芸妓の玉代は一時間一円京王閣の帰途等に一寸寄道して素見すのも一興である。