足尾町遊廓

足尾町遊廓は栃木県足尾町にありて、鉄道に依る時は小山高崎間の桐生市で、足尾線に乗換へ、終点で下車ずればよろしい。

之の町は足尾銅山に依つて建つて居る様なもので、従つて遊廓も銅山の発掘以後に出来たものらしい。元は十軒程あつたのであるが、私娼のために圧倒されて現在では妓楼がたつた一軒娼は約十人程居るのみだ。店は陰店制で遊興は全都東京式廻し制になつて居る。御定りは好景気時代は仲々の豪遊を極めた相だが、現在は一般が不景気の為めに沈淪して最低一円位から二円、三円、四円位の順序になつて居る。台の物は二円以上から付く。一円と云ふのは一時間遊びの事である。相手は主に鉱山に働く人々であるから気さくだ。其れ丈けに気前もよい。人情も比較的純である。