矢板町遊廓は栃木県矢板町（やいたまち）に在つて、東北本線矢板駅からは七八丁の個処に在る。矢板町附近の木幡（きはた）には、木幡神社があつて、坂上田村麿将軍が山城の木幡神社を遷座したものだと伝へられて居る。其の本殿の楼門は特別保護建造物に成つて居る。貨座敷は目下四軒あつて、娼妓は約十三人居るが本県下の女が多い。店は陰店を張つて居て、娼妓は全部居稼ぎ制で送り込みはやらない。遊興は廻し花制で通し花は取らない。費用は御定りが二円で一泊が出来、簡単な台の物がつく。本部屋は無い。附近には寺山観音があり、其東には赤瀧温泉がある。