潮来遊廓

潮来遊廓は茨城潮来(いたこ)にあつて、水郷地として有名である。隨つて船便で行く事を得策とする。佐原から船便で行く時は佐原潮来聞は一日数回小蒸汽及モーター船が出る。約一時間、賃卅五銭位である。

土浦から蒸汽船に乗り霞浦を渡つて行く時は、土浦―佐原間に乗る。約四時間、賃片道七十八銭、潮来は古くから一種の歓楽水郷として有名な処で、江戸時代には船で行く事が一つの型の様になつて居たものであつた。船は真菰の中を走つてギツコンギツコンと水門から真田浦を経て行くが、週辺にポフラの木がぼんやりと立並んで居る情景は全く言ひ得ない情緒である。此の地は昔奥州から中仙道に通ずる要津に当つてゐて、磐子又は鉾田から内海に出入する船は悉く此処を出入せねばならなかつたので水駅(すいえき)として有名であつた。水戸領となつて水戸下市藤柄の娼家が移されてからは益々殷盛を極め旧幕の頃は妓楼九軒娼妓百余名居つたさうであるが、元治甲子の乱に遇ひ過半数を灰燼に帰し、更に明治になつて常磐線の開通と共に幾分は淋れ、現在では妓楼三軒、娼妓約二十名位となつた。店は陰店を張つて居て、娼妓は全部居稼ぎ制である。東京式の廻し制を採つて居る。

費用は玉代(ぎょくだい)が一円で一泊が出来る。御茶と御菓子及酒の二種あつて各々次の様な割合になつて居る。甲の六円が本部屋で、酒附五円も同上、四円及三円七十銭、及二円五十銭は皆本部屋で茶と菓子付、一円五十銭は割部屋で茶と菓子附である。芸妓は花代一本四十五銭、お酌は卅五銭、一時間二本の勘定、祝儀は大一円小五十銭位。

潮来民謡「潮来姐やのなげ盃は、親の意見ぢや止められぬ」

潮来音頭「揃ふた揃たよ、踊子が揃ふたアリアセイ 秋の出穂より好くそるた ションガイ

合唱 よく揃た秋の出穂よりよく揃た ションガイ」