浦賀遊廓

浦賀遊廓は神奈川県三浦郡浦賀町(うらがまち)に在つて、横須賀線横須賀駅から東へ約二里、横須賀から船で行つても善い。乗合自動車で行つてもよい。

浦賀港は、下田港と共に西洋文明輸入の関門で、文明史上に見逃すべからざる所である浦賀奉行の家敷跡とか、番所とか、大砲台場の址とか、ぺルリ上陸記念碑だとかゞあつてそゞろ幕末当時のあわたゞしさを想像せしめる物がある。遊女屋も其の当時には既に在つたもので、今よりは遥かに殷盛を見せて居たのであつたが、鉄道が敷かれ、横浜が開港されると共に衰微して、今では貸座敷がたつた二軒あるのみで、娼妓も七八人しか居ない。陰店を張つてゐて、娼妓は居稼ぎ制、遊興は廻し制で、費用は御定りは二回で台附、四円からは本部屋である。付近には浦賀ドックがある。茲は私娼の為めに公娼が幾分圧倒されつゝある形だ。