白石遊廓

白石遊廓は宮城県刈田郡(かりたぐん)白石町に在つて、東北本線白石駅の南約五丁の地点にある。別に此れと云つて乗物の便は無いが、そゞろ歩きには適当の場処である。人力車で行けば車賃三十銭。

他では大抵遊廓に成つて居るのに、茲は未だ昔乍らの宿場である。陰店式ではあるが、建物は古風にくすんで、旧幕時代の様ななつかしい落付きを見せて居る。制度は総て東京式で、娼妓は居稼ぎ制である。遊興は時間制である。けれども廻しは取るらしい。御定り甲が五円、乙が三円、丙が二円、本部屋は各一円増と云ふ事に成つて居る。此れで御銚子に肴が付くと云ふのだから、余り高くは無い。茲の御定りと云ふのは多分一泊に台付きと云ふ事だらうと思はれる。現在妓楼は三軒、娼妓は二十一名居る。芸妓を呼べば芸妓の玉代一座敷一円六十銭である。妓楼は遊明楼、長春楼、大田楼の三軒である。