石ノ巻遊廓

石ノ巻遊廓は宮城県牝鹿郡石ノ巻町宇旭町に在つて、石ノ巻駅へ下車して東北へ約四丁の場処である。

石の巻は北上川の河口に在る事や、昔は船便の要路であつた事や、貨物の集散地であつた事等は酒田港と善く似た処がある。葛西氏の旧城下で、城址は今公園と成つてゐる鹿島神社がある。景色の善い事真に絶景である。町の多福院は北畠親房の建てた寺で、境内には葛西氏が後醍醐天皇の崩御を哀悼して建てた碑がある。

貸座敷は目下四軒あつて娼妓は三十五人居るが何れも近県の女計りである。店は陰店を張つて居て、娼妓は居稼ぎだ。送り込みはやらない。客の廻しは取るから通し花は取らない。費用は御定りが四円四十銭(税共)で一泊が出来、酒二本、料理三品、外に茶菓も付く事に成つて居る。妓楼は、千葉楼、朝日楼、好見楼、青山楼の四軒である。