青森市旭町遊廓

青森市旭町遊廓は青森県青森市旭町(あさひまち)に在つて、東北線又は奥羽線青森駅で下車して南へ約十丁の個処に在る。

青森は本州最北の都会で開港場であり、北海道への連絡船が出る。県庁があり、兵営があり、善知鳥(うたふ)神社があり、合浦(がっぽ)公園があり妙見堂がある。寛永以前には善知鳥と云ふ一魚村に通ぎなかつたが、藩主津軽信牧公が築港してからと云ふものは隆々として繁昌し、忽ちにして今日の大を成すに至つたものである。明治四十三年五月三日の青森大火に旧柳原遊廓も全滅したので、間も無く現在の地に移転して今日に至つたものである。目下貸座敷が二十一軒あつて娼妓は百四人居るが、何れも青森、秋田県地方の女が多い。店は写真式と陰店式とを併用して居る。娼妓は全部居稼ぎ制である。客は廻し制で通し花は取らない費用は六円、五円、四円、三円の四通りあつて、何れも台物が附いて居る。税は一割。本部屋は無い。青森の遊廓丈けでは、女中其他へは一切祝儀や心付けを与へる必要は無い、。彼等は総て給料制度に成つて居るので、祝儀は絶対に受けない申合せをして居るのだ。貸座敷には、角海老、若松、開金、大金、大(おほすみ)、政岡支店、富美代、金森、松明、第二松明、一六、喜楽、宝来、長谷川、青港、福太、政岡、大桝(だいます)、第三-六、福島、松葉等がある。

里謠じよんから節「ハアー外ヶ浜なる青森港、北は松前樺太迄も、出船入船絶えまなく、ハアー海の青森繁華な青森、汽車は東北奥羽の出所、客の乗り降り東北一」芸妓の玉代は二時間一座敷二円。