楯岡町

楯岡町は山形県北村山郡楯岡町(たておかまち)に在つて奥羽線楯岡駅で下車して北へ約十丁の個処にある。

楯岡は人口約一万の繁華地で、旧幕時代に蝦夷、樺太等を探検した最上徳内と云ふ人の出生地で、近藤重蔵、間宮林蔵等の先鞭者であった。貸座敷は五軒あるが昔乍らの宿場に成って居て旧幕時代の飯盛女気分が徴かに残って居る。店は写真式に成って居て、陰店は張って無い。娼妓は居稼ぎ制で送り込みはやらない。廻し制で通し花は取らない。費用は本部屋が三円三十銭で酒肴附、廻し部屋は二円三十銭で茶菓附、何れも宵から一泊が出来る事に成って居る。妓楼は新島楼、但馬楼、岩城楼、東楼、平楼の五軒で、娼妓は全部で十五人居るが、殆んど山形県の女計りだ。芸妓の玉代は一時間一円である。附近には東根温泉がある。約二里。