新庄遊廓

新庄遊廓は山形県最上郡新庄町や万場町に在つて、万場町遊廓とも云ってゐる。奥羽線新庄駅で下車して北へ約十二丁の処にある。乗合自動車の便があるから、万場町停留場で下車すれば宜しい。名は遊廓と云ふ事には成って居るが、事実上に於ては未だ同道に沿ふた宿場に成って居る。遠からず完全な遊廓と成る事だらう。新庄は奥羽線と小牛田線との交叉点で、奥羽地方に於ける交通の要路である。人口約三万、市政の施かれるのも必らず近い将来に在る事だらう。貸座敷は現在七軒あって、娼妓は全部で二十八人居る。店は全部写真式で店は張って居ない。勿論送り込み制では無い。大阪式の時間制でも無いので廻しは取って居る。御定りは甲(ビール一本付)三円、乙(御銚子一本附)二円五十銭、丙(茶菓附)二円、外に各十三銭宛の税が附く。甲と乙には勿論肴及小物が部く事に成つて居る。本部屋に入るには各一円増しである。芸妓も呼べるが、玉代は一時間一円三十五銭宛である。本場丈けに「おばこ節」も盛んであるが、里謠に新庄節と云ふのがある。

「花の万場町上れば下る。

鉄のわらじもたまりやせぬ」

「さばね山越え舟形越えて、

逢ひに来たぞや万場町に」

妓楼は福寿楼、千年楼、常盤楼、立花楼、伊勢屋、松川楼、恵比良楼の七軒だ。