酒田町遊廓

酒田町遊廓は山形県飽海郡(あくみぐん)酒田町字新町に在って、羽越線酒田町字新町に在つて羽越線酒田駅で下車すれば西へ数丁、乗合自動車は新町で下車する。

酒田港は和船万能時代には有名な港だった。庄内平野は勿論、遠くは米沢置賜(おきたま)方面の産物を最上川の水辺に依って一手に引受けて、一大荷物の集散地であった。今は茲が起点と成って鉄道が四方に敷かれたので昔程では無く成ったが、依然として交通上の要路である事を失はない。有名な大地主本間氏の根拠地で、別邸の庭園等は可成豪壮を極めたものである。(本間様には及びも無いが、せめて成り度や殿様に)と云ふ里謠がある程だ。遊廓も昔から殷賑して、今町、船場町、高野浜の三ヶ所に在ったものであるが、明治二十七年の大震災後に三ヶ所全部合併して今日に至ったものである。現在貸座敷が三十一軒あって娼妓は約百人居るが、秋田県山形県の女が多い。店は陰店を張って居て、娼妓は全部居稼ぎ制である。客は廻し制で通し花はとらない。費用は御定り(一泊)が三円五十銭で、台の物が附く事に成って居る。最低二円八十銭でも遊べる仕組もある。娼楼は小川屋、門真楼、福田楼、常磐家、藤美屋、緑屋、越後谷、群芳楼、桜屋、吾妻家、松村屋、本五楼、柿崎屋、吉田屋、出島屋、西村屋、明園楼、藤屋、下総屋、喜楽亭、海望楼、翠峰楼、松山屋、北海楼、一笑亭、美咲屋、宮崎楼、真田屋、五十嵐屋、清月、高砂屋等である。おばこ節の本場

「おばこ何処さ行かしやんす、こん紺の前掛なんどちょいと締込んで」コバエチヤ〃

「おばこ来るかやと田圃の端れまで出て見たば」コバヱチヤ〃

「おばこきもせで甲の無い煙草売、なんどふれて来る」コバエチヤ〃