小樽南仲桝遊廓

小樽南仲桝遊廓は小樽市京町に在つて、小樽又は中央小樽駅から西南へ約十二三丁の地点に在り、タクシーは一円である。小樽は安政の頃迄は一小魚村に過ぎなかつたが、北海拓殖の発展に伴つて繁昌し、地の利と築港と相俟つて今では大函館市と肩を並べて居る勢だ。高等商業学校があり、水産試験所があり、小樽、中央小樽、小樽築港の三駅を所有して居る。手宮には今から約千二百六十年前に、土耳其(トルコ)人の建てた靺鞨語文の珍らしい碑がある。遊廓も南廓の外に北廓もある。

此の南廓には目下貸座敷が九軒あつて娼妓は約五十人居るが、重に青森県山形県秋田県地方の女が多い。店は写真式で陰店は張つて無い。娼妓は居稼ぎ制で送り込みはやらない。遊興は廻し制で通し花は取らない。費用は御定りが甲四円(本部屋)で、乙は三円、丙は二円五十銭である。各台の物が附いて一泊が出来る。娼楼には、鯉川楼、全盛楼、加陽楼、松金楼、三亀楼、長明楼、山一楼、北越楼、旭楼等。