見付町遊廊

見付町遊廊は静岡県磐田郡見付町に在つて、東海道線中泉駅で下車すれは北へ約十五丁の地点である。駅からは電車及乗合自働車の便があつて、何れも十五分とは掛らない。

今でこそ中泉に駅はあるが、昔は見付が東海道の本街道であつた。当時江戸へ上る時は此処で初めて富士の山巓を見付けるので、見付の台と云つたものだと云ふ事だ。此処の遊廊も宿場の飯盛女時代からの建物で、現在貸座敷が三軒、娼妓は二十五人居る。娼妓は重に三重県岐阜県地方の女が多い。店の制度は陰店で写真は出て居ない。娼妓は居稼ぎ制で送り込み制では無い。遊興は客の好みに応じて、時間制もやれば廻し制もやる。先づ廻し 制と思へば間違ひは無い。本部屋の設備等は勿論無い。其の代り又値も安い。御定りが一円五十銭である。芸妓の玉代が一時間一円五十銭で、見付音頭が民謡兼踊と成つて居り、流行唄としては見付行進曲等がある。妓楼は、山千楼、音羽楼、大栄楼、の三軒である。