松木市遊廓

松木市遊廓は長野県松本市横田町(よこたまち)に在って、中央線松本駅からは約二十丁、駅から横田町迄電車を利用すれば賃九銭。

松本市は松本平の中心に在って、旧戸田氏の城下である。城下は今兵営に成って居る。附近は養蚕が盛んなので、繭、糸、蚕卵紙等の取引が多い。松本も一寸上田に似た感じのある処で、活気の溢れて居る処等は殖民地の、殊に台北辺にでも行った様な感じのする処である。高等学校が出来てからは殊に野球熱が盛んに成って親子兄弟揃って野球チームに加盟して居る人も少くない。貸座敷は目下二十一軒あって、娼妓は百二十人居るが、多くは新潟県の女である。店は写真式の家もあれば陰店を張って居る家もあってまち〃だ。娼妓は全部居稼ぎ制で送り込みはやらない。遊興は廻し制で通し花はとらない。費用は甲が本部屋で酒肴附四円五十銭、乙は廻し部屋酒肴附二円五十銭、丙は廻し部屋茶菓付一円九十銭で一泊可能である。娼妓には、船来亭、万舎、大梧大、松鶴楼、岩亀、第二舶来、梧大楼、角海老、白水、梧中楼、万年楼、高砂、芳山楼、清江楼、万亀、新舶来、蓬莱、梧三楼、三つ井楼、吾妻楼、岩井楼等がある。芸妓の玉代は一円、市の北方約十五丁の処には浅間温泉がある。