新発田遊廓

新発田遊廓は新潟県北蒲原郡新発田町字三宣町に在って、羽越線新発田駅で下車すれば西へ約十三丁、乗合自動車を利用すれば「神明社前」で下車する。新発田は溝口氏の旧城下で、大地主の多い処だけに小作争議も多い地方である。新発田城址は今兵営に成って居るが、濠と城垣のみは依然として昔の儘の懐かしい姿を残して居て、今は濠一面に蓮が繁殖して、夏の開花時節に成ると、花の開く音を聞く為めに、暁の暗い内から人が出盛ると云ふ話である。明治初年には旧藩主の許可を得て、当町旭町で貸座敷を営業して居たのであったが、明治三十七年に全焼したので、間も無く本廓へ移転したものである。目下貸座敷が十九軒あって、娼妓は百十八人居るが県下の女が多い。店は陰店を張って居て、娼妓は居稼ぎ制で送り込みはやらない。遊興は通し花制と云ふ事には成って居るが、馴染客が登楼れば廻しを取る場合もあるらしい。費用は一泊が約五円で台の物は別勘定である。短時間遊びは約二円である。娼楼には新盛楼、遊亀楼、緑楼、第二招月楼、三高楼、楳荼楼、群亀楼、千歳楼、招月楼、若松楼、吉田楼、高橋楼、角新楼、常盤楼、相生楼、丸川楼、山田楼、神風楼、初音楼等がある。芸妓の玉代は一時間一円五十銭である。