滑川町常磐遊廓

滑川町常磐遊廓は富山県中新川郡滑川町に在って常磐新地とも云ってゐる。北陸線滑川駅で下車すれば西南約二丁の地点である。魚津の海岸から滑川の海岸にかけては、マダカスカル島付近のマスカレン島、中央アメリカの一部太平洋岸と、此処とより外には絶対に採れないと云ふ稀らしい蛍烏賊の産地で、左右の脚の尖端から強力な光を放射する。其光域は約一尺以上にも及ぶと云ふ事である。漁期は四月から六月迄で、網を引くのは毎夜十時前後で、恰もイルミネーションの様に美しい。彼の有名な立山登山者は皆茲から出る。立山軽便鉄道を利用する事に成つてゐる。宿場が遊廓に成ったのは何時頃からであるか判明してないが、現在の遊廓には貸座敷業が二十軒、娼妓が十五人、芸妓が七十人居て、皆娼楼の抱へである。店も張つて無ければ陰店でも無い。登楼してから娼妓の相方を撰定する事に成って居る。時間制で廻しは取らない。居稼制で送り込み制では無い。最低の遊興費は全部で三円三十銭、此れ以上なら色々な階級がある。芸妓は一時間花代が一円税は花代の一割祝儀は大抵一円乃至二円位である。茲は小原節が非常に盛んな処であるが、名物蛍烏賊踊と云ふ一風変つた踊りがある。娼妓は大抵富山県石川県の女が多い。妓楼は山東楼、北条楼、新宅、松月、得月楼、大江楼、勝栄楼、吉田楼、第一中島楼、小蝶楼、柳川楼、千トセ、いろは、中村楼、清勝亭、小扇楼、宝亭、吉見楼、正見屋、上田楼の廿軒である。