小木町遊廊

小木町遊廊は石川県珠州郡小木町(こぎまち)に在つて、北陸線七尾駅港から東北へ海上約十八里、輪島港からは海上約六里の処に在る。一小島の中に在る町なので、人情が非常に濃厚だ。島中の人々が皆一家族の様に感ぜられる処である。景色の非常に善い処で、附近の九十九湾は、日本の新百景の内に数へられて居る。貸座敷は目下六軒あって、娼妓は三人居る。娼妓の数の少ないのは、各内芸妓を置いて居て、鑑札こそは違って居ても、娼妓と始んど同様な発展振りをして居るからだ。娼妓は全部居稼ぎ制で送り込みはやらない。遊興は時間制と通し花制で、一時間一円宛の割であるが、引過ぎからの一泊は四五円位である。台の物は附かない、妓楼は、山海楼、大塚楼、新盛楼、日進楼、実松楼、華月楼の六軒だ。