武生町遊廓

武生町遊廓は福井県南条郡武生町(たけふまち)字尾花に在つて、北陸線武生駅で下車すれば西北へ約七丁の地点に在る。武生は昔府中と云つて越前国庁の在つた処である。前田利家の居城も茲に在つたので、歴史的にも一寸関係の浅からぬ処だ。今は打刄物、蚊張等の産地として聞えて居る。で右様の次第なので宿場女郎としての存在も随分古来からあつたものらしいが、別段取立てゝ云ふ程の記録も残つては居ないらしい。明治三十二三年頃に同業者が組合を組織して現在の許可地に移転したものであるが、当時二十八軒あつた同業者が、現在では二十三軒に減つて居る。娼妓は九十五人居る。が県下の者よりも高知県大阪府等の女が大半を占めて居る。店は写真式で陰店は張つて無い。娼妓は居稼ぎ制で送り込みはやらない。遊興は時間制で廻しは取らない。費用は御定りと云ふ物は別に無いが、一時間遊びは二円で、一泊は六七円見当である。御銚子や台の物は含んで無い。妓楼は今川楼、勝見楼、南陽楼、福寿楼、喜楽亭、新愛知楼、一楽楼、勝山楼、吾妻楼、清香楼、広瀬楼、梅花楼、大正楼、万喜楼、朝日楼、昭和楼、森上楼、若松楼、月島楼、万日楼、亀鶴楼、呑喜楼、松葉楼の二十三軒。