一身田町遊廓

一身田町遊廓は三重県河芸郡(かわげぐん)一身田町(いしんでんまち)字橋向町に在つて、関西本線亀山駅から参宮線へ乗換一身田(いしんでん)駅から、伊勢電車へ乗つて高田本山停留場で下車する。此の町には高田専修寺があつて此の寺の為めに栄えた町で、真宗高田派の総本山である。本尊は慈覚大師作の阿弥陀仏で、天拝一光三尊仏である。宗教の盛んな処丈けに、人情は至つて純朴である。貸座敷は目下十一軒あつて、娼妓は五十人居るが殆んど三重県の女だ。店は写真店と陰店との両方あつて、娼妓は全部居稼ぎ制で送り込みはやらない。遊興は「廻し」花制で通し花は取らない。費用は短時間遊びが税共一円三十七銭で台の物は附かない。一泊しても三円位で済む。妓楼は、稲本楼、石壽楼、一月亭、大勢楼、増田屋、福勢楼、光月楼、喜久屋、守正、松栄楼、もり佐の十一軒である。