津市藤枝遊廓は三重県津市藤枝町（ふじえだまち）字藤枝にあつて、鉄道は関西本線亀山駅から参宮線阿漕駅（あこぎえき）で下車すれば駅から東南へ十丁位の処にある、津駅から藤枝に行く定期乗合があつて、賃金十五銭である。電車に依る時は津新地駅行に乗車し藤枝結城神社前で下車する賃金九銭である。元は伊勢街道に沿つた宿場であつたが、伊勢参宮に行く人々が皆是の宿場に泊り、相当宿場としても繁栄を極めたものであつた。其の当時の飯盛女が明治九年遊廓許可と同時に娼妓となつたもので、現在では総数十六軒、娼妓は七十人位居り、全部居稼ぎ制である。店は陰店制で遊興は東京式廻し制である。御定りは酒肴は一切別勘定で甲は四円二十五銭、乙は三円四十銭、丙は一円八十銭である。特に本部屋廻し部屋の区別が判然して居ない、又一時間遊びは一円五十銭と言ふ事に定まつて居る。娼妓は一枚鑑札で女は多く三重県人である。是の土地は遊廓へ芸妓は一切足を入れない様である。津民謠「伊勢は津で持つ津は伊勢で持つ、尾張名古屋は城でもつ、見渡しのいつこはあれど伊勢の海、あこぎが浦の松のむら立。」付近の名勝は津市の駅からすぐ近くに見える丘陵は偕楽公園と言ひ池があり、桜があり特に躑躅の時分は非常に見事で、花見の人で賑つて居る。県庁、県会議事堂等は旧城址の続きにあつて未だに濠を続らし市内は観音寺境内を中央公園と言つて非常に殷賑を極めて居る。又高山神社藤堂氏の別邸結城神社等が有名なものである。遊楼は、山半、新魁楼、太田屋、万陽楼、杉谷屋、常磐屋、柳屋、魁木楼、可祝楼、七福、快進楼、浅重、旭楼、松伊楼、松木楼、月花楼、の十六軒