新古町三遊廓

新古町三遊廓は三重県宇治山田市大世古町(おおせこまち)字新道、一ノ木町、曽根町字新町の三ヶ町に存在するので三遊廓の称がある。関西線亀山駅より参宮線へ乗換へ山田駅へ下車すれば西へ約五丁、山田上口(かみぐち)駅へ下車すれば東へ約五丁である。山田は大古の昔から飯盛女の盛んな処であつた事は、大神宮様の所在地であると云ふ事と共に有名であつた。人口は約五万あつて神都としては日本随一である。然し如何に神都であるとは云つても土地の人のみでは貸座敷が二十四軒、娼妓が二百人と云ふ大世帯を何うしてもこなし得る筈は無い。此れは矢張全国から参詣にやつて来る「女ならでは世の明けぬ国」の人々が大勢で持ち合つて居るのだ。山田には新古市の外に古市遊廓と云ふ、昔から有名な遊廓がある。けれども新古市の方がめきヽと発展して、古市の方が反対に除々に衰微の形を取りつゝあるのは、一つには地の利を占めて居る事と、又一つには営業政策の宜しきを得た結果であらふ。

組織は、全部居稼ぎ制で、旅館兼業の家もある。芸娼も娼妓も一緒に抱へて置く家もあれば、芸妓のみ、娼妓のみの家もある。店は総て写真式であつて、揚げつ切りの時間制と、廻し制との区別がある。御定りは甲一円五十銭、乙一円、外に小物代として二十銭、遊興税は一円に付六銭の割に成つて居る。詰り最低の遊興費は一円二十六銭と云ふ勘定に成る。勿諭チップや、御定り以外の物は別問題である。茲の娼妓は常にふりの客をのふ取扱つて居る為か、初回の客であつても、又最低の遊興であつても、決して客を粗略に扱ふ様な事は無いらしい。妓楼は、山田楼、いろは楼、末広楼、金穗楼、宮本楼、愛知楼、新栄楼、春本楼、錦生楼、小川楼、村松楼、藤屋、巴楼、福本楼、神風楼、新川楼、茂本楼、竹本楼、藤原楼、壽楼、開花楼、美好楼、豊政楼、栄楼、等である付近の名所は、大神宮、二見ヶ浦