八日市町延命遊廓

八日市町延命遊廓は滋賀県神崎郡(かみざきぐん)八日市町に在つて、八日市鉄道線の新八日市駅で下車すれば東へ約二丁、近江鉄道線の八日市駅で下車すれば東へ約一丁の位置である。八日市町は、今より約千三百年以前に、付近に瓦屋寺に於て、彼の有名な仏教の輸入者聖徳太子が、四天王寺の瓦を焼いた処で、其の当時から此の町には、毎月二、五、八の日を市日として、近郷近在は勿論、遠くは彦根、手原辺から迄人々が寄つて来て、年々市が隆盛に向ひつゝあつて現在に及ぶ事は有名な事で、八日市の名は此処から出たものだらうと云はれて居る。現在揚屋が四十一軒あつて、娼妓は五十人芸妓が五十五人居る。店は陰店式で写真は出て居ない。娼妓は総て送り込み制ふ稼ぎ制では無い。遊興は時間制で廻しは取らない。一時間が一円五十銭で一泊は六七円見当である。娼妓に比して芸妓の数が比較的多いのは、商業上に花柳界の利用される率の多い事を物語つて居る物だ、芸妓のχ代が一時間七十銭と云ふ法外な安価さも手伝つて居る事も其原因の一つであらふ。遊楼は

五月楼 招福楼 清里楼 魚居楼 東楼 角笑楼 角愛楼

梅花楼 朝日家 吉勝楼 丸藤楼 金笑楼 大正楼 招月楼

若枝楼 一力楼 桔梗屋 お多福楼 福米楼 平の家 丸八重楼

壽し卯 木屋房 角まさ 花の屋 相生楼 清雪楼 浅常

浜屋 浪本楼 万遊楼 三玉楼 天正楼 木屋龍 いろは楼

市福楼 中ふじ 小石屋 新角笑 清定 寺村楼 等がある