京都祗園遊廓

京都祗園遊廓は京都市祇園町(ぎおんまち)に在つて、東海道本線京都駅で下車、東北へ約二十五丁、市内電車は祇園で下車する。祇園感神院(ぎおんかんじんいん)の勧請されたのは貞観十一年、今から約一千六十年前で当時の腰掛茶屋(こしかけちゃや)の茶汲女は、実に祗園新地の濫觴であつた。享保十七年には茶屋渡世の公許が下り、寛政二年(今から約百三十年前)には遊女町の許可があつて、完全に遊廓と成り、更らに明治十八年には甲の部乙の部とに分離して今日に至つたものである。甲乙共に芸妓は娼妓より多い。現在芸娼妓置屋は百卅軒、揚屋は約百軒、芸妓は二百人、娼妓は三十人居る。近県、及九州地方の女が多い。芸娼妓共に送り込み花制で、居稼ぎをやる事はめつたに無い。遊興は全部時間制で、廻しは絶対に取らない。費用は一時間遊びが二円で、二時間目からは一時間目毎に一円宛を加算して行つて、一昼夜と成れば十四円五十銭に割引される。但し台の物は別である。付近には、祇園清水、智恩院、東山等がある。