伏見撞木遊廓

伏見撞木遊廓

京都府伏見市撞木町(しゅもくちょう)にあつて、鉄道は関西線伏見桃山駅で下車すれば北方へ約十町位の処にあつて、駅から更に電車に依つて行く場合には京阪電車或は奈良電車何れに依つても好い。京阪電車又は奈良電車に依る場合は墨染停留場で下車し、又京都市電は伏見線笛口(ふえぐち)で下車する。

撞木町遊廓の沿革は最も古く、豊太閣の全盛時代が濫觴で、花街は非常に殷賑を極めたものであつたが、後徳川幕府時代となつて、慶長十五年に初めて幕府から公許を得て遊廓が出来たのであつた。実に此の撞木町遊廓が花街公許の嚆矢だと言ひ伝へられて居る。以後元禄年間と成つて赤穂浪士として有名な、大石良雄の仇討は此処を本居として種々の謀議を廻したと言はれて居り又遺蹟もある相である。総軒数二十軒娼妓約七十人位居て、全部稼居制である。店は写真制で普通で全部大阪式の時間遊びである。御定りは一時間一円五十銭位で外遊興税は約十二銭位其の他一切含みで一円七十銭で一時間遊べる。時間が永くなる時は、段々安くなつて行く割合になつて居る。付近の名勝の桃山御所、桃山明治天皇の御陵及乃木神社等がある。妓楼は本家都楼、第二都楼、第三都楼、第四都楼、第五都楼、本家栄昇楼、第三栄昇楼、松月、柳月、大米、一力楼、小野楼、末広、西冨楼、沢田楼、松栄楼、阪井楼、外二戸