大阪市新町遊廓

大阪市新町遊廓は大阪市西区新町に在つて、関西線湊町駅から北へ約十丁、市電は四つ橋、又は新町へ下車する。新町遊廓は昔から有名な処で、遊廓としての存在も既に三百年の歴史を持つて居る。夕霧伊左衛門、冥途の飛脚、等は何れも皆茲を背景として作られ たものである。江戸の吉原と、京都の島原と、長崎の丸山と、茲の新町は、徳川時代の代表的遊廓で、日本の四大遊廓とされて居たものである。今でも大阪では茲が最も古風な花柳情調の漂つて居る処だ。目下貸座敷は百八十三軒あつて、娼妓は五百五十人居る。娼妓の中にも甲と乙とに別れて居て、甲は芸妓と同様に、揚屋(茶屋)に送り込まれて行く、所謂送り込み制であるが、乙の娼妓は、写真店に抱へられて居て、居稼ぎをやる娼妓である。乙種娼妓の居る一廓を吉原と呼んで居る。遊興は全部時間制又は通し花制で、廻しは絶対に取らない。一時間遊びが二円八十銭で、此れ以上なら種々な遊び方がある。台の物は附かない。宵からの一泊は先づ十円と云ふところ。