室津遊廓は兵庫県揖保郡（いぼぐん）室津村（むろつむら）に在つて山陽線網干駅（あぼしえき）へ下車すれば西南へ約三里姫路駅で下車すれば乗合自動車の便もある。賃金は八十銭。宝津は江戸時代に西国の大名が参観交代の折の船着場で、鉄道の敷かれぬ前迄は交通の要路であつた。従つて土地の歴史も古く、千有余年以前から、宝君、友君、宮木、大柄均、小柄均等と云ふ有名な遊女が居たと云ふ伝説がある。而して此処の遊廓には豊臣秀吉、千清盛、徳川三代将軍家光等の来遊した記録もあるので、遊女の格式も一段と高く、花魁は裲襠、広帯、足袋等は古来から其の使用を許されて居た処である。現在は貸座敷が三軒しか無いが、娼妓は三十人居る。兵庫県の女は少なくて九州の女が多い。店は陰店を張つて居て、娼妓は全部居稼ぎ制である。遊興は通し花制で廻しは取らない。費用は御定りが三円五十銭で台の物は付かない。短時間なら八十銭でも遊べると云ふ安値か処である。娼楼は愛栄楼、金勢楼、昇栄楼等である附近には賀茂神社、法然上人二十五霊場第三番浄運寺等がある。