尾ノ道市遊廓

尾ノ道市遊廓は広島県尾ノ道市久江町に在って、山陽線尾ノ道駅から東へ約十五丁乗合自動車の便がある。尾ノ道は備後第一の港市で、瀬戸内海水路の要衛である。畳表、洒酢鯛等の集散地だ。市の裏方には大宝山があって、中腹には千光寺があり、山嶺には千畳敷と云ふ古城址がある。尾ノ道瀬戸から内海の半円を見下して、無数の湖水をつなぎ合せたかのやう、実に吉備第一の眺望である。貸座敷(揚屋)は目下七十八軒あつて、娼妓は二百二十人居る。四国九州地方の女が多い。店は写真店で陰店は張つて無い。娼妓は少数の居稼ぎの他は全部送り込み制である。遊興は時間花制で廻いしは取らない。費用は四十分一円で、引け過ぎからの一泊は四五円程度である。税は六分。台の物は別勘定である。