広島市西遊廓

広島市西遊廓は広島県広島市船入町に在つて、山陽本線広島駅で下車する。市内電車の便もある。市電は上小綱町下車。広島は元浅野氏の旧城下で山陽、山陰両道第一の都会である。太田川、神田川、京橋川、天満川、川添川、元安川、本川等が市内をゆるやかに流れて居るので、至る処に橋が多く、恰も水都の観がある。橋の多い所は大阪に似て居るが、大阪の様に川の水が濁つて居ない。傘、蚊帳、藍、家具、燐寸等の産物がある。当廓は明治廿五年に創立されたもので、貸座敷は目下五十五軒、娼妓は約三百人居る。店は写真店で陰店を張つて居ない家が多い。娼妓は送り込み制、又は居稼ぎ制で、遊興は時間、又は通し花制である。廻しは取らない。費用は一時間遊びは一円五六十銭、宵から一泊の通し花は六七円見当である。但し台の物は附かない。芸妓の玉代は一時間一円廿五銭。