厳島町遊廓

厳島町遊廓は広島県佐伯郡厳島町に在つて、山陽線厳島駅からは西へ約二丁の処に在る。(宮島駅から厳島連絡線に乗るのだ。)厳島は日本三景の一で、厳島神社の在る所である事は、三ッ子迄も善く知つて居る。俗に云ふ宮島詣りとは此処の事を云ふのだ。厳島神社の故事、来歴絶景等は余りに有名な事であるから、此処では改めて説明する事を避けやうけれ共、厳島の存在は知つて居ても、遊廓の存在を知らぬ人が多い。現在貸座敷が四軒あつて、娼妓は十四人居る。宮城県鹿児島県の女が多い。宇治山田の遊廓に比較するには余りに淋しい感じはするが、営業方針の如何に依つては、各国から人々が寄つて来る処丈けに、将来は大いに発展する可能性がある。店は写真式で陰店は張つて無い。娼妓は全郁居稼ぎ制で送り込みはやらない。遊廓は宿泊制で廻しは取らない。費用は御定り(一泊)六円で、一時間遊びは一円五十銭だ。但し何れも台の物は付かない。妓楼は一富士楼、三日月楼、生駒楼、一楼の四軒である。芸妓は呼べない。土地の名勝を唄つた俚謡に「安芸の宮島廻れば七里、浦は七浦七恵比須」と云ふのがある。杓子、御盆等が名物で、参詣人の必ず買つて帰る品物である。