鳥取市衆楽園遊廓

鳥取市衆楽園遊廓は鳥取県鳥取市瓦町に在つて、山陰線鳥取駅から西北へ約一丁の個処に在る。鳥取は池田氏の城下で、旧城址は今公園に成つて居る。公園の一角に扇邸と云ふ旧藩主の別荘がある。附近の国府村には武内宿禰を祀つた宇部神社があり、最近には駅の近傍に温泉が湧出したので、近県の人気は鳥取に集注されつゝある事は確だ。遊廓は元旧藩主の別荘の在つた処で、廃藩後から明治初年頃迄は、各種の興行物の集団地だつたので、漸次に私娼から公娼と殖え、今では貸座敷が四十七軒、娼妓は八十五名、芸妓は三十五名も居る。島根県鳥取県の女が多い。店は陰店を張つて居て、娼妓は殆んど送り込み制だ。遊興は全部時間制で、費用は最初の一時間は二円十銭、二時間目からは一時間毎に七十二銭増しである。(税共)台の物は別だ。芸妓の玉代は一時間一円十銭二枚鑑札の女も居る。妓楼は、粂家、小松家、鶴の家、達磨、成都、開喜楼、由仲、由元、益家、今津、末広、玉喜、はやし、糸竹、明月、三松、甲州楼、芳川、井筒、由芳、戎家、中松の家、錦波楼、都家、寿、丸清、山正、丸竹、吉田楼、春日野、君の家、富の家、由明楼、布袋、武蔵野、風月、三友亭、若葉、寿の家、福住、五月楼、松の家、開楽、成田楼、新吉田楼、加根吉、稲荷山、等である。附近には十数個処の温泉があり、剣豪荒木又右衛門終焉の地で、墓前には香煙の絶間無い。土地では川魚、海魚共に豊富である。