琴平町遊廓

琴平町遊廓は香川県琴平(ことひら)町新地に在って、讃予線琴平駅で下車する。自動車があり町内五十銭均一である。讃岐の琴平宮と云へば、誰一人知らぬ者は無いだらう。遠路から態々やって来る参詣者の多い事は、伊勢の大神宮に次ぐと云ふ事だ。大巳貴命と崇徳天皇とを祀つたもので、海神として祀られて居る。貸座敷は目下二十八軒あって、娼妓は約百十一人程居る。女は四国九州地方の者が多い。店は陰店を張つて居る。娼妓は居稼制と送り込制との両制になつて居る。遊興は時間制、又は通し花制で廻しは取らない。費用は一時間遊びが一円三四十銭で、宵から十二時迄が三円、大引過ぎからは二円五十銭位、宵からの一泊は五円見当で、何れも台の物は別勘定だ。娼妓の中には特に芸妓を兼ねる者も居て芸妓の鑑札を持って居る、つまり二枚鑑札の者も居る訳だ。名勝、金比羅宮、万燈籠、鞘橋、楼名は、福山楼、港家、気儘楼、錦正楼、松島楼、松葉楼、松ヶ枝、翁楼、朝日楼、盛開楼、第二気儘楼、起鳳楼、千歳楼、後藤楼、一福楼、福菊楼、栄楼、岩喜楼、松栄楼、一富士楼、与可楼、友野楼、松涌楼、三福楼、日吉楼、安楽楼、小松楼等。