八幡市白川遊廓

福岡県八幡市白川町に在つて、九州線枝光駅で下車しても宜く、又は八幡駅で下車しても宜しい。何れで下車しても約六丁程の距離である。枝光駅よりは南に当つて居り、八幡駅よりは北に向つて居る。電車の便があって、北本町で下車すれば宜しく何れも五六分間で到着し、賃金は金五銭である。此辺は一帯に工場地帯であって、九州化学工業、安田製釘所、九州耐火煉瓦、旭硝子、三菱骸炭、八幡製鉄等の煙突が林立して煤煙の為めに天日も暗い程の光景である。斯様な状態に在るので、八幡市は急激な発展を遂げ人口は既に十万を突破して居る有様である。従って其反影たる遊廓の発展は素晴しく遊廓の許可された大正四年当時は、僅々数軒の同業者に過ぎながったものが、今日では二十六軒に殖えて居り、娼妓の数も二百七十人を数へて居ると云ふ盛況だ。茲は純然たる遊廓に成って居て、店は全部陰店である。娼妓は居稼制で送り込み制では無い。而して遊興は時間制で廻しは絶対に取らない事に成って居る。遊興費は一時間約二円、御定りは終夜六円、其他甲七円、乙六円、丙五円、と云ふ種類がある。甲の娼妓は、芸妓の鑑札をも所持して居る所謂二枚鑑札の女が相方に成る事に成り、乙と丙は普通の娼妓が相方に出る事に成って居る。税は酒肴料には掛らないで、玉代に対してのみ一割二分六厘丈け附く事に成つて居る。茲の芸娼妓は主に九州地方の女で、殊に島原方面の女が多い。里謡「見せてやり度い此の九州の、山に石炭町には工場、湊々に船が着く。よんこらさ〃」妓楼は、日の丸楼、寿楼、大福楼、大光楼、金盛楼、駒音楼、第二敷島楼、一楽楼、松鶴楼、敷島楼、三栄楼、大阪楼、福寿楼、更進楼、柳家楼、泉楼、玉満楼、円成楼、共栄楼、八幡楼、角末楼、第一楼、松浦楼、清輝楼、幾世楼、第二泉楼、計廿六軒。