若松市連歌町遊廓

若松市連歌町遊廓は福岡県若松市連歌町に在って、筑豊線若松駅で下車すれば北へ約六丁の地点である。若松は筑豊線の起点で、人口約八万、門司を凌ぐ石炭輸出港である。若松の生命は石炭である。いや若松其者が既に石炭の為めに生れた市だ。寛延元年に筑豊炭が発見されてからの歴史は可成古いものであって、此石炭が土台と成って出来た大工場は数多くある。石炭を輸出する帆船が常に数千隻宛も碇泊して居る壮観は実に東洋一だと云ふ事だ。此かの遊廓は明治三十四年六月十六日に、許可されたものであるが、其の前身は私娼及び宿場女郎であった。現在貸座敷が十軒あって、娼妓は約百十人居る。店は陰店式に成って居て写真は出して無い。娼妓は居稼ぎ制で送り込みはやらない。遊興は時間制で廻しは取らない。御定りは昼五円、夜六円と云ふ事に成っては居るが、四円でも三円でも揚げる。一泊するには何うしても七円乃至八円は掛ると思はねばならない。此処には船頭小唄と云ふのがある。「船頭小唄に港は暮れて月に墨絵の高塔山」「主は若松わしや姫小松ぬれて色ます女夫松」遊楼は、明月楼、第一いろは楼、福柳楼、若戎楼、若楽楼、松月、福寿楼、大吉楼、大正楼、第二いろは楼、等。