武雄町温泉遊廓

武雄町温泉遊廓は佐賀県杵島郡武雄町字武雄温泉場に在つて、長崎線武雄駅で下車すれば東北へ約五丁である。武雄は温泉場ではあるが、惜しい哉少々湯の量が少ない。け れ共風景は善い上に付近には炭鉱があるので、遊び場として非常に発展して居る。内湯は無いが共同浴場等は実に堂々たるものである。因に此湯は神宮皇后が三韓征伐の折に発見されたものとしてある。従つて土地には古い歴史が在る丈けに、湯女は可成古くから居て湯治客を慰めて居たものらしく、今の遊廓は其の後身である。目下貸座敷は七軒あつて、芸妓及娼妓は約百人居て、中には二枚鑑札の女も多く居る。店は陰店を張つて居て芸娼妓共に居稼ぎ制である。遊興は通し花制で廻しは取らない。費用は一泊で最低の経費が総計で七円五十銭掛る。其れ以上は客の好み次第である。貸座敷は花月、一楽、第三国明楼、第四国明楼、小桜楼、改盛楼、文明等である。