台南市新町遊廓

台南市新町遊廓は台南州台南市新町に在つて、台湾幹線台南駅から西南へ約十丁、乗合自動車は新町で下車する。賃十銭。台南には、鄭成功を祀つた県社台南神社がある、台湾島は、今から約三百年前にはオランダ領であつたものを、鄭成功はオランダと戦闘の上に占頭した。後支那の清朝に占領されて明治に至つたもの。鄭成功の父は支那の明朝の臣、鄭芝龍で、日本に渡つた時に、肥前の藩士田川氏の娘と至る結婚して、其の間に産れたのが此の鄭成功であつた。茲の遊廓は大正四年に現在の個処に移転したものであるが、元は市内南勢街に在つたものだ。目下貸座敷は十四軒あつて、芸妓七十人娼妓は百十人居る。鹿児島県の女最も多く、次は長崎県熊本県の女である。店は写真店、芸娼妓は全部居稼ぎ制で、送り込みは芸妓もやらない。遊興は時間制と、通し花制で、廻しは取らない。御定り一泊は五円五十銭で、一時間遊びは二円だ。何れも台の物は付かない。妓楼は、置屋、揚屋、料理屋の兼営だ。。芸妓の玉代は一時間一円二十銭。妓楼は、北国楼、布引楼、加賀屋、東楼、明月楼、豊本、皆花園、高砂、明石楼、鮮月楼、朝鮮楼、開門楼、富士見、金波楼、の十四軒。台南ノ民謡「門司を出てから、二夜は夢よ、恋し南の島へ着く。ホーラ、ホーライ、ヨイトコナ、キタコラ、キタコラ、ヨイキタ、ホーライ、ヨイヤサ。「君と南へ、北回帰線、月は新高山の上。ホーラ、ホーライ、ヨイトコナ、キタコラ、キタコラ、ヨイキタ、ホーライ、ヨイヤサ。「冬がいやなら、南の島へ、雪のない島、春の島。「夢が見たけりや、南の島へ、椰子の木かげで、恋のゆめ」付近にはオランダ時代の珍らしい城址がある。