清津星ヶ丘遊廓

清津星ヶ丘遊廓は咸鏡北道清津府(せいしんふ)北星町に在つて、咸鏡線清津駅で下車すれば東南へ約五六丁行つた海岸通りを南へをれた処である。乗合自動車を利用すれば、北星町入口で下車する。賃金は市内十銭均一である。清津は開港場であつて咸鏡北道第一の都会である。此の遊廓も元は料理店の組合であつたが、大正八年に現在の個処へ遊廓の許可が取れたので、直ちに茲へ移転して来たものである。従つて建築も設備も堂々たるもので、他の大都市の其れに優るとも決して劣るものでは無い。現在貸座敷は十四軒あり(内二軒は鮮人経営)娼妓は約百四十人(内鮮人三十人内地人は主に長崎県人百十人)居るが、尚最近に二軒程増加する意気込みである。店は陰店を張つて居て、娼妓は居稼ぎ制である。二枚鑑札の芸娼妓も多く居るが、此れも送り込みはやらない。遊興は全部通し花制で廻しは取らない。費用は芸娼妓が一夜七円で、娼妓は六円である。台の物は別勘定である。此の遊廓独特の鴨緑江節「津々の、海より深い私の思、主は知つてか知らいでか、高まつ山の月さえて、かりの音身に沁む秋の空」、付近には朱乙温泉があつて、汽車自動車の便もある、朝鮮八景の一としても有名である。娼楼には寿楼、常磐楼、余香楼、文化楼、祐多加楼、山遊楼、鳴門楼、栄楼、大盛楼、一鶴楼、花月楼、吉祥楼、野月楼、一福楼等である。